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8/24〜26

24日、なぜかこの日の朝体重を計ると前日よりも減っていた。
1回に飲める量は相変わらず少ないのだが、なるべく回数を増やして飲ませるようにしていた。それなのに、体重が減るなんて。先生に聞くとおしっこが増えているかららしい。
手術後は、体重が増えすぎた方が危険らしい。減っていても問題はないといった。
こんな風にミルクを飲まない、体重が増えないと、悩むのももうしばらくだけだ。
手術をすれば、他の子のように、ミルクをいっぱい飲んでくれる、体重もどんどん増えていく。手術後心配なのは、かぜをひかさないようにすることだ。私は手術後のことをあれこれ考えた。

夕方、○明さんと一緒に心臓の専門医から手術の説明を聞いた。
先生は最初から詳しく説明してくれた。
今由宇斗の心臓はどういう状態であるか、その影響で他の臓器がどういう状態になっているか、そのため由宇斗にどんな影響があるか。この間の検査の結果わかったこと、今度の手術はどんなことをするのか、手術後どう改善するのか、そして1年後心臓自体の手術をするが、どんな手術になるか、その結果、由宇斗がどれだけ治るのか。
今までよく理解できなかったことが、ようやく納得がいった。
理解できたものの、不安は大きかった。
当初予定していた手術はそう大変なものではなかったらしいが、あたらしく発見された病気を治すのはとても大変な作業を要するという。
しかし、危険だからといって手術をやめたら、由宇斗はどうがんばっても、今以上成長することは不可能らしい。
それならば、生きるためには手術を承諾する以外方法はない。
不安を抱えながらも由宇斗の手術をお願いした。
部屋に戻って、○明さんは会社に戻るまで由宇斗の相手をしてくれた。
この日は○明さんがいる間は眠っていた。

次の日同じ病室のお母さんが、手術はうまくいくよと励ましてくれた。
同じ病室の2人は同じ心臓病で、同じ先生が治してくれたのだそうだ。あの先生に任せていれば大丈夫。そう言ってくれた。私もそう信じようとした。

この日も由宇斗はなかなか眠らなかった。
昼をすぎてようやく眠ってくれた。
私も寝不足と抱っこし疲れていたので、由宇斗のとなりで一緒に昼寝をした。
夜、消灯になっても相変わらず眠ろうとしない。
明日から由宇斗はICU入ってしまったら、しばらく抱っこできないのだ。
今日は久しぶりにおっぱいをあげてみた。ひさしぶりなのでうまく吸い付けなかったが、口に入った途端、以前のようにくちゅくちゅしながら気持ちよさそうに眠りに入ってくれた。この日の夜は久しぶりによく眠ってくれた。
そのせいで、次の日起きてからはとても機嫌がよかった。
この日は、8時30分頃手術室に入ってしまうため、それまで由宇斗と少しでも一緒にいようと思い、ベットに上って由宇斗の相手をしていた。
ご機嫌だったためか、この日は何度も笑ってくれた。本当に何度も。
嬉しい反面、私は不吉な予感に襲われた。これが由宇斗が目をあけている最後の顔かもしれない、と。私はこの不吉な予感を頭から締め出した。
由宇斗の顔をじっと見つめる。すると、由宇斗が成長したときの顔が目に浮かんできた。
そうだ、大丈夫だ、手術はうまくいき、由宇斗は無事大きくなれるんだ。そう信じ込もうとした。「由宇斗、戻ってきてね、元気になって戻ってきてね。またお母さんに笑顔をみせてね」私は何度も何度も祈るように由宇斗につぶやいた。
とうとう時間になった。
手術室の前で看護婦さんを待つ間、私はいい知れぬ不安に襲われ涙が止まらなくなった。
手術をやめたい、ここから逃げ出したい。私の感情は叫んでいた。でもそんなことをすれば、由宇斗はよくならないのだ。理性が私をたしなめる。
看護婦さんがでてきて、由宇斗を抱きかかえた。
泣いている私に「大丈夫ですよ」と声を掛けてくれた。
ドアの中に入る前に、看護婦さんは由宇斗の顔がよく見えるように、こちらを向けてくれた。「由宇斗帰ってくるよね。また顔見れるよね。大丈夫だよね。」
私はドアの中に入って見えなくなってしまった由宇斗に一生懸命語りかけた。
部屋に戻っても不安で不安で、部屋の片づけをしなければならないのに、何もする気になれなかった。
30分程して○明さんが病室に入ってきた。
私は不安な気持ちを打ち明けたが、○明さんはまるで不安を感じていないらしかった。
そうだ、何も心配することはないんだ。信じ込もうとした。
10時頃、○明さんのお姉さんも来てくれた。お姉さんはおしゃべりだ。
おかげで、お姉さんとしゃべっているうちに気が紛れてきた。
だんだん気持ちがリラックスしてきた。
4時を過ぎ、先生が手術室から顔を出した。
「予定通り手術は終了しました」そう告げた。
よかった、由宇斗は無事なのだ、本当に心から安堵した。先生が神様のように思えてきた。深々と先生にお礼をした。
私達は2人で由宇斗の様子を見に行った。
由宇斗はたくさんのチューブにつながれていた。目は堅く閉じている。
あまりの痛々しさに涙があふれてきた。抱きしめてあげたかったが、これだけたくさんの計器がついているとそれもできない。頭をなでてやるしかできない。
先生が由宇斗の手を出してくれた。「手を握ってあげてもかまいませんよ」そう言ってくれた。
私は由宇斗の手を固く固く握り締めた。
「がんばったね、早く元気になってね。」
私は由宇斗にささやいた。私は手を通して、すこしでも由宇斗にパワーを送りたいと思った。
私達は部屋を出て一緒に付き添ってくれたお姉さんや私の親に由宇斗の手術が無事終わったことを告げた。みんな心から喜んでくれた。
私はもう何も心配することは無いと思った。手術はうまくいったんだ。よかった。本当によかった。○明さんだけ病院に残ってもらい、私は安心して家に帰った。
○明さんの実家に帰った私はお風呂に入っていたとき、「○明から電話があって、また掛けるって言っていたよ」といわれた。
私は妙な胸騒ぎがした。由宇斗に何かあったのだろうか?いや、そんなはずはない。
手術は無事終わったはずなのだ。きっと明日持ってきて欲しいものを連絡してきただけだ。そう思おうとした。しかし不安は消せない。急いでお風呂を出て、電話を待った。
電話がかかってきた。私はすぐにとった。
「由宇斗の血圧、心拍数が急に下がり心臓マッサージでも戻らないため、補助循環装置を取り付けた」○明さんは告げた。
補助循環装置?意味がよく飲み込めない。それは由宇斗の様態が悪いということなのか?
「とりあえずは補助循環装置を取り付けていれば、今すぐどうなるわけではないけど、自分で心臓を動かせないわけだから、今後どうなるかはわからない。」と言った。
私は心臓がどきどきしてきた。由宇斗に何が起こっているの?由宇斗は大丈夫なの?
いやだ、由宇斗がんばって元気になって。私は心の中で叫んだ。
とりあえずあすとを寝かしつけた。
それからいてもたってもいられず、○明さんに電話をかけたが、その後特に進展はなかった。今の時点で私にできることは何も無い。ただ祈るだけだ。私は実穂子ちゃんにもらったお守りを握り締め、何度も何度も「由宇斗を助けてください。由宇斗を守ってください。私の命をささげます。どうか由宇斗に未来を与えてください」と祈り続けた。

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