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8/19〜23 19日、あすとを保育園に送った後、由宇斗を日赤に連れて行った。 部屋に入ると、4人部屋になっており、ナースステーションからはガラス張りとなっていてプライベートがまるでない。落ち着かない環境だ。 看護婦さんがまず体重を計る。この1週間で200g増えていた。今回は順調に増えている。これならば、入院の必要なんてないではないか。手術する必要なんてないではないか。私は由宇斗をつれて帰りたかった。連れて帰ればよかった。勇気を出して先生にもう少し手術は待ってくれと頼めばよかった。今となってはもう遅い。 血圧をはかられたり、体温を測られたり、聴診器をかけられても、由宇斗は慣れているのか、まるで泣かない。というより、落ち着いている。 ミルクをあげると、家にいるときよりもたくさん飲んで寝てしまった。 家よりも病院の方が由宇斗には落ち着くのだろうか? 先生から明日のカテーテル検査の説明を聞いて、あわただしく○明さんは帰っていった。 この日、由宇斗は本当に落ち着いてよく寝ていた。こちらが退屈してしまうぐらい。 消灯の時間になり、ようやくカーテンを閉めることができ、この日初めて母乳をあげることができた。 母乳を飲んで落ち着いたのか、夜中までそのままぐっすり眠った。 私は馴れないベットでなかなか寝付けなかった。 おかげで由宇斗が目を覚ますとすぐにわかった。 ぐっすり眠っていたせいか、たっぷりミルクを飲んだ。 飲んで寝てしまったので、しばらく抱いた後ベットに寝かすと、由宇斗が苦しそうにしている。 やばい、と思い抱きかかえた途端、吐いてしまった。 めったに吐くことのなかった由宇斗だが、吐く時は飲んだ分全部出してしまったと思われるほど大量に吐く。心配になったが、由宇斗はすっきりしたのかそのまま穏やかに寝てしまった。 次の日、カテーテル検査のため、11:00以降はミルクをあげることができない。 最後のミルクをあげてから、ベットに上って由宇斗の相手をする。由宇斗は足をぽんぽん上にあげたり、のばしたりしてあげるのが気持ちがいいらしい。これをしてあげるとご機嫌になる。今日は声を出して笑ってくれた。あまりのかわいらしさに由宇斗にキスをしてしまう。「由宇斗今日の検査がんばるんだよ」由宇斗にささやく。 昼を過ぎるとおなかがすいてきたのか泣き始める。 抱っこをしても泣き止まなくなる。 仕方が無いので、おしゃぶりを付けると必死でおしゃぶりを吸っている。 「こんなものでごめんね」謝りながら抱っこしてあげていると、うとうとしだす。 でも基本的にはお腹がへっているので、うとうとするだけですぐ目を覚ましぐずりだす。私は抱っこしつづけるのもつらくなってきたので、ベットに降ろして片手で由宇斗の手を握り、もう片方の手で由宇斗の胸をぽんぽんしてあげ、おでこを由宇斗のおでこにくっつけてあげた。すると由宇斗は肌が触れ合っていて安心するのかおしゃぶりにすいついたまま眠りに入る。またぐずると胸をぽんぽんしてあげると、また落ち着いて眠りに入った。 そうしながら、ずっと由宇斗のそばにくっついていた。 数時間たち、5時過ぎになってようやく処置室に連れて行かれた。 看護婦さんが抱きかかえるとき、おしゃぶりを外して泣くかな、と思いきや、お腹がすきすぎたのだろう、泣く元気もなさそうに黙って看護婦さんに抱かれていた。口の周りにはおしゃぶりの痕がしっかり残っている。かわいそうな思いをさせた。 検査自体心配ないものらしいが、全身麻酔を打つのでやはり心配だ。 2時間ほどたつと、終わりました、と看護婦さんが呼びに来た。 待合室の前で心配そうな顔をしていたせいだろうか、先生が顔を出して「無事終わったからね」と声を掛けてくれた。中からは由宇斗のはげしい泣き声が聞こえてくる。麻酔がかかっているはずなのに、何をされているのだろう? 中から出てきた由宇斗は眠っていたが、苦痛で顔がゆがんでいた。 歩きながら、先生は「今回の検査でもうひとつ病気が発見されたからね」と言った。 私は「えっ!」と思った。思わず「治るんですか?」と尋ねた。 先生は「今度の手術で一緒に治すね。治らないような深刻な病気ならこんな風に話してないよ」気楽な調子で言った。 なんだ、大した病気じゃないのか。よかった。とこのときは先生の言葉を信じた。 部屋に戻ってから、再び詳しく検査の結果を聞いた。 もともと理解が足りなかったせいもあり、新しい病気を説明されても、やはり理解できなかった。とりあえずは、今度の手術でそれも治すということだった。 由宇斗は麻酔のせいで眠りつづけている。看護婦さんが胸に計器をとりつけると、ふにゃふにゃとかぼそい声で泣くが、はっきりと覚醒しているわけではない。 麻酔がきれるのは夜中らしい。麻酔がきれたら傷が痛んで泣くのだろうな、と心配したが、看護婦さんは「痛がって泣いている子は今まで見たことがない」と言った。 そんなものだろうか? 消灯してからも何度も由宇斗の様子を見に、看護婦さんが部屋に入ってきた。 最初は起きていたものの、前日ほとんど寝ていないせいで、私は知らないうちに眠ってしまった。2時ごろ、由宇斗がふにふに泣き出した。麻酔がきれたのだ。 とりあえず白湯を40ccほどあげると、すごい勢いで飲み干してしまった。 吐く危険があるので、わたしは15分程抱っこしたままでいた。 心配なさそうなので、ベットに戻すと、しばらくしてまた泣き始めた。 おなかがすいているのだろう。いきなりミルクをあげると危険なので少量にしてください、と言われていたので、20ccだけあげる。これも一気に飲んでしまった。 これでは足りないだろうな、と思っていたが、抱っこしているうちにまた眠ってしまった。 そしてそのまま朝まで眠っていた。やはり痛みは感じていないらしい。 起床時間の少し前にミルクを飲むと、再び眠りに入った。 麻酔のせいなのだろうか?とにかく眠りつづけている。 この日、昼過ぎにいぐちゃんがお見舞いに来てくれた。 由宇斗は眠っていたが、いぐちゃんに由宇斗の生の姿をみせてあげることができてよかった。 由宇斗は5時間眠りつづけた。 それだけ眠っているので、ミルクの飲みもいい。 ところが、体が本調子ではないのだろうか。○明さんが付き添いの交代に来た時、今飲んだミルクをほとんど吐いてしまった。 最初苦しそうにしていたが、だんだん落ち着いて再び眠りに入った。 大丈夫そうなので○明さんと交代をした。 今日明日とあすとと一緒だ。寂しい思いをさせてしまったのだ。思い切り相手をしてあげよう。 初めは清洲の家に戻るつもりでいたが、天白にある私の実家に泊まりたいというので、わがままを聞いてあげた。 夕方ビデオ屋に行ってあすとの好きなビデオを借りた。 その後手芸屋に行き、あすとがポケモンのマスコットを作って欲しいというので、それも買った。そして、おじいちゃんとおばあちゃんを連れてうどん屋へ行った。 久しぶりにあすととお風呂に入った。 夜、眠る時、私はあすとに言った。「寂しい思いをさせてごめんね。いっぱい我慢させちゃってごめんね。」あすとは涙ぐみながら「うん、いいよ。」と言ってくれた。 「どうなったらお母さんは戻ってくるの?」あすとは尋ねた。 「由宇斗が元気になるまでよ。」と私は答えた。 するとあすとは「由宇斗君病気でかわいそうだね。」と言った。 私はあすとのこの言葉に感動した。あすとはまだ4歳なのだ。おかあさんが自分と一緒にいないのは、由宇斗のせいだ、由宇斗なんていなくなっちゃえばいいのに、そうしたらお母さんは戻ってくるんだ、とこう考えても無理ないことだろう。 しかし、由宇斗が生きていた45日の間、あすとがこんなふうに由宇斗を責めたことは1度も無い。それどころか、病気の弟を気遣っている。自分だってつらいはずなのに。 なんて優しい子なのだろう。なんて思いやりのある子だろう。 このお兄ちゃんなら、この先由宇斗が病気がハンデで大変な思いをしても、あすとが助けてくれるだろう。 22日、あすとをどこか遊びに連れて行きたいのだが、今日も朝から暑い。 どうしようか考えていたら、いぐちゃんが昨日あすとに会いたがっていたのを思い出した。 今日はハッシュの日で、いぐちゃんがコースを作る日だ。ゴールも名東区あたりだろう。 いぐちゃんに連絡をとってみると、牧野ガ池公園がゴールだという。 私はあすとを連れてその公園に連れて行った。 いぐちゃん達と合流して、みんなで銭湯に行きお昼ご飯を食べた。 その後、ハッシュのみんなと合流した。ハッシュのメンバーの多くが今日由宇斗のお見舞いに行ってくれたらしい。ありがたいことだ。 みなと別れて、買い物をしていたら、3時過ぎになってしまった。 最初は公園に戻って、しばらくあすとを遊ばせるつもりでいたが、そうしていると、病院に戻れるのは5時過ぎになってしまう。しかたないので、このまま病院に直行することにした。 病院に着くと、ロビーで○明さんが、由宇斗を抱っこしてうろうろしていた。 昨日と今朝はよく眠っていて、あまり遊べなかったらしい。 夕方になってようやく目を開け始めたので、廊下を散歩していたらしい。 私はあすとと別れを告げた。あすとは泣きながら病室まで追いかけてきた。 私をあすとを思い切り抱きしめてあげた。「ごめんね、来週またいっぱい遊ぼうね。」 あすとは涙しながらも、ぐっとこらえて、私にバイバイをしてくれた。その姿がいじらしい。名残を惜しみながらも、由宇斗に再び会えた喜びに胸を躍らせる。 しかし、昨日からずっと寝ているなら、今日の夜は寝てくれないだろうな、と思った。 そしてその予想通り、由宇斗は寝てくれなかった。 私も○明さんに見習って廊下をうろうろ歩く。 抱っこしていると寝るのだが、ベットに置くと起きてしまう。 そしてまた廊下を抱っこしながらうろうろするのだ。 夜消灯を過ぎても眠ってくれない。また廊下をうろうろ。 夜中の授乳後も、いつもなら飲むと寝てしまうのが、今日はなかなか寝付かない。夜中も廊下をうろうろ。おかげで看護婦さんに「あら、また寝てくれないの?」と声をかけられる。 次の日も午前中はまるで眠らなかった。 いいかげん、廊下をうろうろするのに疲れてしまったので、ベットにあがり、由宇斗の好きな足の運動をしてあげる。すると、泣き止んで楽しそうにしてくれる。 しかしこれももっても1時間。だんだん飽きて泣き始める。こうしてミルクをあげて、再び廊下をうろうろ。寝たと思ってベットに置き、目をつぶったままであるのを確認してから、哺乳瓶を洗いに行ったり、トイレに行ったり、由宇斗の相手をしていて出来なかったことを寝たと同時にやりに行くのだが、戻ってみると、由宇斗は目を開けてぐずぐず泣いている。再び眠らせ、今度はベットに私もあがってみると、目を開けても、私の姿を確認すると、安心して再びおとなしく眠りに入る。 この1週間で由宇斗はかなりの甘えん坊になった。 私の姿が見えないとすぐ泣く。眠っていても私が席を外したのを察知して、目を開けて泣き出す。しかし、私がベットに一緒にいると、安心してぐっすり寝ている。一度目を開けても、また寝てしまうのだ。 一度、お風呂に入るため、おじいちゃんに由宇斗を見ていてもらったことがあった。 15分くらいのことなのに、戻ってみると由宇斗は泣いている。おじいちゃんが泣き止まそうとめずらしく抱っこをしているが、泣き止まない。 私は、もうお腹がすいたのかと思い、そのままおじいちゃんに抱っこしていてもらい、ミルクを作りに行った。 その間ずっと由宇斗は泣いている。 私は「はいはい、もう泣かなくていいよ」と声をかけてあげると、その声だけで、ぴたっと泣くのをやめたのだ。 「お母さんの声がわかるんだなあ」おじいちゃんは感心している。 私も感激してしまった。私が抱っこすると泣き止むことはよくあったが、声だけで泣きやんだのはこれが初めてだ。うれしい、こんなに小さくてもお母さんがわかるんだね。本当に母の実感である。 いとおしくて由宇斗にすりすりする。 こんな風に由宇斗は、私が戻ってからとても甘えていた。 今から思えば、先が短いと予感した由宇斗が、生きているうちにいっぱいお母さんに甘えようとしていたのだろう。すこしでもお母さんの顔を見ていようと、眠らないでがんばってくれたのだろう。 しかし、昼間は由宇斗の相手を存分にできるが、夜中はつらかった。 由宇斗がぐずると、他の子供も目をさまし、いっしょにぐずりだしてしまうからだ。 廊下に出て、うろうろするのだが、静かなのでスリッパの音がやけに響いてしまう。 ロビーに行くと、電気がこうこうと点いていて、抱っこされている由宇斗の目に直接光が入ってしまって、それも気になる。仕方ないので廊下を何度も何度も往復する。 しかしベットに戻すとまた目を開けてぐずるのだ。 由宇斗を早く寝かさなきゃ、黙らせなきゃ、と気があせる。 疲れてしまった私は最後はおしゃぶりを取り出し、由宇斗の口に押し付ける。 すると、眠らないまでも静かにしていてくれる。 そうして、私は少しうとうとする。 今になって思うことは、これが由宇斗の最後のわがままだったのだ、もっとこたえてあげればよかった。由宇斗の最後の甘えだとわかっていれば、24時間でも抱いていたのに。 次へ |
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